税理士 本橋裕央のブログ

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遺産分割⑥(相続放棄3)
更新日:2015年11月13日

明日から2日間、「知っておくべき相続の基礎知識」セミナーを開催致します。9月から準備を始め、早いもので明日が開催日となります。無料相談は、事前予約制ですが、セミナーは当日先着20名様となりますので、お気軽にご参加ください。

さて、今回もセミナーを共催して頂く北村司法書士による相続放棄3回目の記事となります。「保証人になってはならない・・・」なんとなく耳にする言葉ですが、次の事例をもとに、保証人になることの恐ろしさを紹介します。

3年前に父が亡くなりました。相続人は母と兄(長男)と私(長女)であり、遺産分割も無事に終わりました。父に借金はなく、私は父の預金を相続し、何度か支払いのために使っております。
つい先日、金融機関から、父が友人の借金の連帯保証人となっていたということで、返済の督促状が届きました。連帯保証人の件は父から一切聞いたことはなく、督促状が届いて初めて知りました。
金融機関の担当者に事情を聴いたところ、借金をした父の友人は既に亡くなっており、その相続人は全員相続放棄をしたとのことです。
私は、連帯保証人として、父の友人の借金を肩代わりしなければならないのでしょうか?

  ---------------------------
 |      金 融 機 関       |
  ---------------------------
    |                        |
  (借金)               (返済の督促)
     |                     |
       ⇓                   ⇓
 父の友人~~≪連帯保証≫~~父----------母
(既に他界)           (被相続人) |
★相続人は                    |
全員相続放棄★           --------------
                       |         |
                         |         |
                      兄(長男)     私(長女)



まず、保証人の地位も相続されるのかというと、一定の身元保証を除いては、保証人の地位は相続されます。保証人は保証債務を負う者ですから、債務の一つとして法定相続分で相続人に承継されます。

そして、連帯保証人(父)は、単なる保証人と異なり、債権者(金融機関)からの督促に対し、債務者(父の友人)への催促の有無、債務者の資力の有無にかかわらず、借金全額を支払わなければなりません。
借金を肩代わりした連帯保証人は、通常であれば、債務者に対し、肩代わりした借金と同額の金銭を支払うよう請求できますが、今回はその債務者が亡くなっており、さらにその相続人も全員相続放棄をしているため、そういった請求ができません。

では、長女自身が、父の相続について相続放棄をできるかについて検討してみます。 父が亡くなったのは3年前ですが、金融機関から督促状が届いたのはつい先日です。一見、前回紹介した最高裁判例から、3か月の起算日を遅らせて相続放棄の申述が間に合うようにも見えますが、長女は相続した預金を既に支払いのために使っています。つまり、相続財産に手を付けてしまっているため、3か月の期限内であっても、相続放棄は認められないのです。

このように、保証人となることで、その相続人に思わぬ迷惑がかかることがあります。保証人にはなるべくならないほうがよいのですが、もし何らかの事情で保証人となった場合には、きちんと相続人に報告するべきです。