税理士 本橋裕央のブログ

本橋会計事務所 税理士 本橋裕央が、税金に関する情報などを書いています。

キーワード検索:
遺産分割②(代償分割)

来月の14日(土)・15日(日)の13時より、日野市の新町交流センターにて、セミナー「知っておくべき相続の基礎知識」及び無料相談会(要事前予約)を行います。
先月末から告知を行い、徐々に予約を頂けるようになって参りました。ご興味のある方は、各日定員20名となっておりますので、お早目にご予約下さい。

さて、今回の記事は前回に続き、北村司法書士による遺産分割協議②になります。具体的な事例にて、遺産分割の手法を見て参ります。


私(長男)は、父が所有する自宅に父と妻子と同居しておりましたが、この度父が亡くなりました。母は先に亡くなっており、相続人は私と弟と妹の3人です。遺産は①自宅(評価額6,000万円)と②預金600万円です。私はこのまま妻子と自宅に住み続けたいのですが、どのように遺産を分割すればよろしいでしょうか?

         父   --------------  母
      (被相続人)      |      (既に他界)
       --------------------------------
       |            |              |
    私(長男)      弟(次男)          妹(長女)
   実家に父・     独立して別居        独立して別居
   妻子と同居

 
 遺産のほとんどが不動産である場合、「代償分割」という方法が考えられます。不動産を共有名義にすることは、後日、相続人間に問題が起きる場合があり、後々の手続きが複雑になるので避けるべきです。
 代償分割とは、遺産を多く取得した人が他の相続人に対して代償金を支払うことで、遺産の取り分を調整する分割方法です。

 今回のケースでは、相続人の相続分は各3分の1ですので、各2,200万円((6,000万円+600万円)×1/3)となります。長男の希望どおりにするのであれば、自宅を長男が取得し、弟と妹が預金を各2分の1(300万円)取得し、長男が代償金として1,900万円ずつ渡せば、弟と妹の不足分を満たすことができます。
ただし、代償分割をするには、代償金の原資がなければなりませんので、長男はこのような事態に備えて資金を積み立てておく必要があります。

なお、代償金を分割して支払うこともできますが、その場合は、長男の自宅に担保権を付けたり、公正証書による債務承認支払契約書を作成するなどして、代償金を確実に回収できるように備えておくのが良いと思います。

また、父としても、長男が自宅を取得することを望むのであれば、生前に生命保険に加入し、その保険金の受取人を長男とすれば、代償金の原資とすることができます。生命保険金は受取人固有の権利であり、遺産分割の対象とはなりませんので、確実に長男が取得することができます。ただし、相続税の課税対象にはなります。

以上のように、遺産のほとんどが不動産である場合には、被相続人と不動産の取得を望む相続人とが、他の相続人のことを考え、生前から遺産分割の準備をしておくことが大切になります。
また、他の相続人も、被相続人と同居し介護してくれた相続人に対しては、遺産分割について譲歩する姿勢が必要になるのではないでしょうか。