税理士 本橋裕央のブログ

本橋会計事務所 税理士 本橋裕央が、税金に関する情報などを書いています。

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遺産分割③(寄与分)

自社で、相続セミナーを開催することになり、他の方がやられているセミナーがどのようなものか勉強させて頂くことがあります。相続税法の改正により、「相続」にスポットが当たる様になり、弁護士、行政書士、FP、保険屋さん、不動産屋さんなど多くの業種がセミナーを開催しています。セミナーテーマも幅広く、相続税の計算から、遺言、生命保険の活用、土地活用まで様々です。改めて相続業務の幅広さを感じます。

さて、今回の記事も来月のセミナーを共催して頂く北村司法書士による遺産分割協議③になります。具体的な事例にて、寄与分の説明をして頂きます。

私(二女)は、母と同居しておりましたが、この度母が亡くなりました。父は先に亡くなっており、相続人は私と姉の2人です。遺産は預金3,000万円のみです。
姉は、母の遺産分割について、法定相続分(1,500万円ずつ)で分けることを主張しております。
姉は、結婚して家族と暮らしており、母の介護については私に任せていました。
私は、独身ということもあり、母が亡くなる3年前から、認知症で常に見守りが必要な母の介護をしてきました。このような事情は遺産分割をするうえで考慮してもらえないのでしょうか?
 

             父   ------------  母
           (既に他界)    |     (被相続人)
                       | 
                ------------------
                |               |
              姉(長女)          私(次女)
            独立して別居       実家に母と同居
 
この場合、二女は「寄与分」というものを主張して、法定相続分より多くの相続分を主張することができます。寄与分とは、被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与(貢献)をした相続人がある場合に、相続財産からその者の寄与分を控除した財産で相続分を算定し、その算定された相続分に寄与分を加えた額をその者の相続分とすることで、相続人間の公平を図る制度です。

二女の無償の介護によって、母は老人ホームへの入居などの介護サービスを利用しなくて済んだのですから、二女の介護は寄与分と考えることができます。
介護による寄与分の評価方法については、介護保険における「介護報酬基準」を用いることが裁判上多くなっているようです。

判例の中には、被相続人に対する常時の見守りが必要となった後について、親族の介護であることを考慮し、1日あたり8,000円程度と評価したものがあります。
仮に、この評価額で二女の寄与分を算定すると、8,000円×365×3=876万円となります。そうすると、寄与分による調整後の相続財産は、3,000万円-876万円=2,124万円となり、二女の最終的な相続分は、2,124万円×1/2+876万円=1,938万円となります。

ただし、遺産分割協議はあくまでも相続人間の合意ですので、寄与分を主張しても相手方に受け入れてもらえなければ成立しません。受け入れてもらえない場合は、家庭裁判所の調停で決めることになります。
とはいえ、ただ漠然と「親を介護したのだから遺産を多くもらいたい。」と主張するのではなく、介護報酬基準に基づく算定方法であることを説明し、介護の記録などを示すことで、相手方の受け入れ方もだいぶ変わってくるのではないでしょうか。