税理士 本橋裕央のブログ

本橋会計事務所 税理士 本橋裕央が、税金に関する情報などを書いています。

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相続税率の改正

先週末に「第1回相続セミナー&無料相談会」を日野市で開催しましたが、ご好評頂きましたので、「第2回相続セミナー&無料相談会」を来年の2月6日(土)・7(日)に、立川市で開催することとなりました。今後、隔月で立川市と日野市にて、交互に開催ができたらと思っております。

第2回セミナーの開催場所は、立川市子ども未来センター(立川まんがぱーく)となります。立川駅から少し離れてはいますが、駐車場もあり、とてもキレイな施設なので、是非いらして下さい。詳細は、後日ブログ等にてご案内させて頂きます。

さて、以前に相続税の基礎控除額の改正についての記事を書きました。
昨年(平成26年)までの基礎控除額は、「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」でしたが、今年(平成27年)から「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に引き下げられましたという内容です。

基礎控除額は、相続税の課税最低限の定めなので、基礎控除額を超えた部分の遺産(課税価格)について、相続税がかかってきます。ということは、基礎控除額の引き下げにより、相続税の課税の機会が増えることになります。

さらに、基礎控除額の引き下げの他、相続税の税率自体も上がっています。税率増の影響が出る方は、下記の方です。
相続税の速算表を見ながらご説明致します。

★相続税の速算表(平成27年1/1以後の相続・遺贈)
【法定相続分に応じる各人の取得金額】  【税率】   【控除額】
        1,000万円以下         10%     ―
1,000万円超3,000万円以下         15%     50万円
3,000万円超5,000万円以下         20%    200万円 
5,000万円超1億円以下            30%    700万円
1億円超2億円以下               40%   1,700万円←ここと
2億円超3億円以下               45%   2,700万円←ここと
3億円超6億円以下               50%   4,200万円←ここと
6億円超                      55%   7,200万円←ここ

昨年に比べ、取得金額1億円超のところで税率の区切りが細分化され、さらに最高税率が50%から55%へと引き上げられています。改正による税率アップの影響が出るのは、取得金額が2億円超の区分からとなります。

こうした改正により、以前は、100人に4.3人が課されていた資産家対象の相続税も、かなり身近な税金になってきました。

路線価

11月14日(土)・15(日)に相続セミナー&無料相談会「知っておくべき相続の基礎知識(相続税の計算と必要な手続きについて)」を日野市の新町交流センターにて開催しました。

初日は、お天気が悪く、予約されていた相談者様数名のキャンセルもあり、小規模な開催となりました。一転して2日目は、事前予約以外の方が、数名、当日参加されるなど、盛況で、とても良いセミナー&無料相談会となりました。参加して頂いた皆様、ありがとうございます。税理士・司法書士ともに良い仕事が出来ました。

2日間のセミナーを通して、路線価が、あまり一般に知られていないのを感じました。路線価は、毎年7~8月くらいに国税庁から発表されます。道路に面する標準的な宅地の1㎡あたりの価額が、千円単位で地図(路線価図)に表記されます。

相続税や贈与税を計算するにあたり、この路線価を基に土地の価額を見積ります。昔は、各税務署に冊子で置いてあり、その場で閲覧ができる様になっていましたが、インターネットが発達し今は、国税庁のホームページ(路線価図:http://www.rosenka.nta.go.jp/)から見ることができます。
セミナー当日、早速、スマートフォンで、ご自身の宅地の路線価を調べている方がいらして少し嬉しく思いました。

相続税や贈与税を計算するにあたり、土地の価額を見積もる(評価する)必要があるのですが、その評価方法として一般的に使われるのが路線価方式で、路線価×その土地の面積(㎡)で計算されます。かける面積の単位は「㎡」であり、「坪」ではありませんのでご注意下さい。

例えば、路線価図で当事務所(立川市柴崎町3丁目6番地)の前の通りの路線価を調べてみると、1030Cとなっています。Cは借地権の割合を示すもので、誰かに土地を賃貸している場合に関係してきます。自分で使用している宅地であれば関係ありません。

1030Cの路線価に接する144㎡の正方形の土地であれば、1,030千円×144㎡=148,320,000円として評価されます。
実際は、土地が細長かったり、三角形であったり、路線価が宅地の表と裏に付されていたりなど、そう簡単な計算で評価できませんが、路線価×面積が第一の基本となります。

さらに、路線価は、だいたい通常の売買取引価格の80%に設定されていますので、路線価方式で計算した土地の価額を1.25倍すると、現在の土地の売買取引価格に近い値を出すことができます。148,320,000円×1.25=185,400,000円・・・結構な価額となります。

遺産分割⑥(相続放棄3)

明日から2日間、「知っておくべき相続の基礎知識」セミナーを開催致します。9月から準備を始め、早いもので明日が開催日となります。無料相談は、事前予約制ですが、セミナーは当日先着20名様となりますので、お気軽にご参加ください。

さて、今回もセミナーを共催して頂く北村司法書士による相続放棄3回目の記事となります。「保証人になってはならない・・・」なんとなく耳にする言葉ですが、次の事例をもとに、保証人になることの恐ろしさを紹介します。

3年前に父が亡くなりました。相続人は母と兄(長男)と私(長女)であり、遺産分割も無事に終わりました。父に借金はなく、私は父の預金を相続し、何度か支払いのために使っております。
つい先日、金融機関から、父が友人の借金の連帯保証人となっていたということで、返済の督促状が届きました。連帯保証人の件は父から一切聞いたことはなく、督促状が届いて初めて知りました。
金融機関の担当者に事情を聴いたところ、借金をした父の友人は既に亡くなっており、その相続人は全員相続放棄をしたとのことです。
私は、連帯保証人として、父の友人の借金を肩代わりしなければならないのでしょうか?

  ---------------------------
  |     金 融 機 関      |
  ---------------------------
   |                     |
 (借金)               (返済の督促)
   |                    |
   ⇓                    ⇓
 父の友人~~~≪連帯保証≫~~~父----------母
(既に他界)             (被相続人) |
★相続人は                      |
全員相続放棄★           --------------
                      |         |
                      |         |
                    兄(長男)      私(長女)


まず、保証人の地位も相続されるのかというと、一定の身元保証を除いては、保証人の地位は相続されます。保証人は保証債務を負う者ですから、債務の一つとして法定相続分で相続人に承継されます。

そして、連帯保証人(父)は、単なる保証人と異なり、債権者(金融機関)からの督促に対し、債務者(父の友人)への催促の有無、債務者の資力の有無にかかわらず、借金全額を支払わなければなりません。
借金を肩代わりした連帯保証人は、通常であれば、債務者に対し、肩代わりした借金と同額の金銭を支払うよう請求できますが、今回はその債務者が亡くなっており、さらにその相続人も全員相続放棄をしているため、そういった請求ができません。

では、長女自身が、父の相続について相続放棄をできるかについて検討してみます。 父が亡くなったのは3年前ですが、金融機関から督促状が届いたのはつい先日です。一見、前回紹介した最高裁判例から、3か月の起算日を遅らせて相続放棄の申述が間に合うようにも見えますが、長女は相続した預金を既に支払いのために使っています。つまり、相続財産に手を付けてしまっているため、3か月の期限内であっても、相続放棄は認められないのです。

このように、保証人となることで、その相続人に思わぬ迷惑がかかることがあります。保証人にはなるべくならないほうがよいのですが、もし何らかの事情で保証人となった場合には、きちんと相続人に報告するべきです。

遺産分割⑤(相続放棄2)

相続セミナー開催まで、1週間となりました。昨日、セミナーを共催する北村司法書士と模擬講義の通しをしてみましたが、とても良い講義が出来そうです。無料相談の受付は、前日まで行う予定ですので、是非、いらして下さい。

さて、今回は北村司法書士による5回目の記事となります。前回に続き、「相続放棄」の実践編を具体例から見てゆきます。

相続放棄の条件として、「自己のために相続開始があったことを知った日から3か月以内に申述しなければならない」のは、前回説明したとおりです。
この「自己のために相続開始があったことを知った日」とは、どのような日を意味するのでしょうか。次のような事例から、検討してみたいと思います。

ある日突然、消費者金融から私(長女)のもとに、半年前に亡くなった父方の叔父の借金についての督促状が届きました。私の両親は既に他界しており、子どもは私一人だけです。父の両親(祖父母)も亡くなっております。父の兄弟は叔父のみで、叔父に子どもはなく、叔父の妻は叔父より先に亡くなっております。

この場合、叔父が亡くなってから半年も経過しているため、私は叔父の借金を返済しなければならないのでしょうか。


         祖父   ------------  祖母
       (既に他界)      |     (既に他界)
                     | 
              -------------------
             |                |
       母----------父     叔父-------叔父の妻
    (既に他界)  | (既に他界) (既に他界) (既に他界)
              |
            私
          (長 女)


この場合、「自己のために相続開始があったことを知った日」について、2とおりの解釈が成り立ちます。

1つめの解釈として、督促状が届くまで長女が叔父の相続人であることを知らなかったという場合です。
今回のケースでは、叔父の相続につき、第1順位の子どもがいなく、第2順位の両親、第3順位の兄弟がともに先に亡くなっているため、相続人がいないにようにも思えます。しかしながら、民法には「代襲相続」という規定があり、被相続人より兄弟が先に亡くなっている場合には、その兄弟の子ども(甥・姪)が相続することになるのです。
長女が代襲相続を知らなければ、督促状が届いた時に初めて叔父の相続人であることを知ることになるので、督促状が届いた日から3か月以内に申述すれば、相続放棄が認められる可能性があります。

2つめの解釈として、長女が叔父の相続人であることは知っていても、叔父に借金があることを知らなかったという場合です。
この場合は、最高裁の判例により、3か月の起算日を、「自己のために相続開始があったことを知った日」ではなく、「相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識できる時」とすることができるのです。
少し難しい表現ですが、長女が叔父の相続財産が全く存在しないと信じることについての正当な理由がある場合には、長女が督促状を受け取った時から3か月以内であれば、叔父の相続人であることを知った日から3か月が経過したとしても、相続放棄を申述することが特別に認められるのです。

被相続人が亡くなってから3か月が経過した後に被相続人の借金の督促状が届いたとしても、冷静に対処すれば、事案によっては家庭裁判所に相続放棄を認めてもらうことができるのです。

遺産分割④(相続放棄)

11月14日(土)・15日(日)に開催される相続セミナーの予約を徐々に頂いております。日野市の広報誌である「広報ひの 11月1日号」にもセミナー開催のご案内を掲載しましたので、お早目にご予約下さい。定員は両日20名となります。

さて、今回も引き続き北村司法書士による遺産分割に関する記事の④となります。前回、前々回と遺産分割協議という相続財産の分け方について検討してきましたが、今回は相続財産自体に着目してみたいと思います。

相続財産といえば、預貯金や不動産といった価値のある「プラスの財産」が代表的ですが、金銭債務(借金)のような「マイナスの財産」も相続財産に含まれます。そして、「マイナスの財産」が「プラスの財産」を上回る場合、相続人は相続財産を引き継がなければならないのでしょうか?

このような場合、家庭裁判所に相続放棄を申述し、受理されることで、相続財産を引き継がずに済みます。ただし、注意しなければならないのは、「マイナスの財産」だけでなく「プラスの財産」も含めた全ての相続財産を手放すことになるということです。なぜなら、相続放棄をした相続人は、初めから相続人ではなかったものとされ、相続分を失ってしまうからです。そして、この相続放棄には次のような条件等があり、身内が亡くなった後に行うには、かなり大変な手続であると思います。
①家庭裁判所に対し申述しなければならない
②自己の為に相続開始があったことを知った日から3か月以内に申述しなければならない
③相続財産に手を付けてしまうと、相続放棄を認めてもらえない可能性がある

ところで、遺産分割協議の中では、相続人の一人が相続財産を単独で取得する代わりに債務も全額負担するといった内容のものが、よく見受けられます。

しかし、そのような場合であっても、債権者が承諾しない限り、他の相続人が債務の負担を免れることはできず、法定相続分の割合で各相続人に承継されます。

もっとも、相続人間の内部分担としての合意として協議を成立させることはできます。このことは、金銭債務は“相続財産”であって“遺産分割の対象”ではないということを意味します。
 
このように、被相続人が残した借金を完全に放棄するには、面倒でも家庭裁判所に相続放棄を申述する必要があるのです。